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告白 感想

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五年に一回あるかないかの活字が読めるテンションになったので、この機を逃さぬ内に適当に目に入った小説を読む。 今回読んだ湊かなえの告白は、2008年に発表されたいわゆるベストセラーで、2010年に映画化もされた超有名な作品らしい。 恥ずかしながら全く知らなかったが、そう言われるとこの表紙に見覚えがある気がしてくるから不思議だ。 ■どんな話? 三者三様の視点から語られる復讐劇。 ■雑感 主題は、愛。(だと勝手に決めつけます。) 自己愛、友愛、家族愛、生徒への愛、無償の他者への愛。 作品には歪みに歪んだ様々な愛の形が描かれる。 そして一貫しているのは、愛は常に他者に理解されぬ(一番分かってほしい相手にさえ)、一方通行なものであるということ。 傍からみて、空回りしたり、大げさだったりする、滑稽なそれを、皆笑い、逆に笑われる。 だが、それは彼らにとっての生きる意味であったり、自己を保つために必須なものであるのだから必死である。 愛は常に他者に理解されぬという部分を、語り手を章ごとに切り替えることによって、うまく表現しており、話が進むにつれて難解な謎が解けたような、すっきりした感覚が得られる。 意外性の連続で、読んでてうまいなと思わせる構成。 話自体は、好みであるかと言われると微妙なところではあるが、後半は完全に引き込まれていたので、面白いお話でした。

ボーズ・ミーツ・ガール 感想(2巻まで)

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定期的になろう小説、というか異世界転生もの、が読みたくなるのだが、そんな時に出会った一冊。 なろうでもタイトル違いだけど読めるみたいです(中身は一緒っぽい?)。 https://ncode.syosetu.com/n7337dg/ ■どんな話? 「そも仏道とは護法のために編まれ、やがて体系立ててひとつの道として確立された総合戦闘術である」 という一文がすべてを表す、坊主が物理で異世界無双する話。 ■雑感 宇宙空間で戦争を繰り広げるような世界で、戦うために生み出されたクローン僧兵の主人公は、壮絶な戦いの末、今際の際にいつもの中世な異世界に転生される・・・という冒頭から始まる。 いや設定盛りすぎだろ!!開幕から飛ばしまくり。 転生先で自身のことを、地球(軍)の和尚様で、terraのオショウだと名乗るの面白すぎる。 このギャグを使いたいが為の、使い捨てだが無駄に壮大なSF設定だったに違いない。 中身はどうしようもなく強い主人公が、無双していく異世界無双もの・・・なんだが、主人公がイロモノ過ぎてその無双っぷりに嫌味がまったくない。 嫌味が無い無双ものに残るは爽快感だけ。 また、物語を彩る登場人物は、同情を禁じ得ない哀れな境遇の持ち主が多い。 その誰もが、それを受け入れ、悲壮な覚悟をもって、でも笑顔でいる。 そんな奴らを物理で救っていく様は、痛快さをさらに高める。 するっと読めて後味すっきり。 一風変わった、異世界無双ものが読みたいときにオススメ。 ■2巻の感想 1巻で綺麗に終わっていて、2巻どうなんだろうなと思っていたが、面白い。 登場人物、世界に魅力があるといいね、もっと読みたいって思える。 が、ツェランみたいなのを出すなら、もう少し練ってほしい。

僕の心のヤバイやつ 感想(3巻まで)

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あの「みつどもえ」の桜井のりお先生の新作兼、僕の最近の生きがい。 ■どんな話? 悶えること間違いなしの恋愛もの。 つまり、ヤバイやつ。 ■登場人物からみたヤバさ 主人公の、京太郎君の魅力がヤバイ。 その異様に自分に自信がない彼は、息をするように相手を慮れる男。 表には出さないが死ぬほど素直(矛盾などない)で、自身を客観視できている彼の一挙手一投足は、いちいちえもえものえもなのだ。 対するヒロインの山田ちゃんもヤバイ。 彼女のどこまでわかってんのかわからない態度がヤバイ。 なにもかもかわいいし、やばやばのやば。 ■描写からみたヤバさ この漫画はモノローグの使い方が非常にうまい。 主人公以外のモノローグは徹底的に廃しており、ひたすらに京太郎君からみた世界が描かれる。 そして、そんな京太郎君のモノローグですら、彼の深層心理の部分は描写されない。 話の中の小さな一コマが、京太郎君自身も意識しないうちに彼の行動に影響を及ぼす。 京太郎君が頭で考えずに行ったその何気ない行動が、ひたすらに山田ちゃんに突き刺さっていく様はとにかくエモい。 散りばめられた小さな伏線が、一切説明描写無しに回収される。 だが、わかりやすい。 この漫画は丁寧すぎるほど丁寧な漫画である。 ■総括 一味違った、男性向け恋愛漫画。 面白いです。 今(3巻)がもっとも脂の乗っている時期だと思うので、ここからにもさらに期待。